「時事メディカル」さまに、理事長執筆の記事「生理は病気じゃないけど…~つらさを我慢しなくていい理由~【第1回】」が掲載されました。

「生理は自然なもの」「誰にでもあることだから」と言われ続け、私たちはそのつらさを「仕方ない」と受け入れてきたのかもしれません。学校でも会社でも普段通りに過ごすことが当然とされ、「痛い」「だるい」と言い出しにくい雰囲気に悩んだ経験がある方も多いのではないでしょうか。
ここで伝えたいのは我慢しなくていいということです。生理は病気ではありませんが、日常生活に支障が出るほどの痛みや不快感がある場合は医学的に“治療”できます。つらさを軽くするために知っておいてほしいことを婦人科医の立場から伝えます。
◇痛み強烈、潜在リスクも
「生理痛があっても我慢するのが普通」と感じていませんか? 確かに生理は多くの女性にとって日常の一部です。しかし、すべての生理痛が正常というわけではありません。実際、重い生理痛の背後に子宮内膜症や子宮腺筋症といった病気が隠れている場合もあります。
また、月経前症候群(PMS)の症状として、気分の落ち込み、いらいら、眠気、食欲の変化などが起こる人も少なくありません。これらは気のせいではなく、ホルモンの変化に伴う医学的な反応です。
「ただの生理痛だから」「このくらいで病院に行ったら大げさかも」と思って受診を先延ばしにすると、慢性的な症状や不妊リスクにつながる場合もあります。我慢し続けず、自分の体の声に耳を傾けてあげてください。
◇選べる対処法
現代の婦人科では、生理にまつわるつらさに対して多くの選択肢があります。下記に例を示します。
● 鎮痛薬:痛みの出始めに服用すれば痛みをコントロールできます
● 低用量ピル:排卵を抑えてホルモンバランスを安定させ、生理痛やPMSの軽減に効果的です
● 漢方薬:冷えや血流の滞りがある方には体質改善として有効な場合も
● ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム):子宮内膜を薄く保ち、経血量や痛みを減らせます
これらの対処法は、症状の重さやライフスタイルに応じて選べます。生理でも元気に過ごせる時代になっているのです。一度婦人科で相談してみましょう。
◇治療対象の可能性も
「みんなこんなものだろう」と思っていても、実は自分の生理が“平均”や“正常”と少し違っていることもあります。一般的な生理は次の通りです。
● 周期:25〜38日くらいで一定
● 出血日数:3〜7日程度
● 経血量:多過ぎず少な過ぎず、昼用ナプキンで2〜3時間もつ
● 痛み:市販薬でコントロールできる範囲
これらの目安から大きく外れる場合や、塊のような経血が多い▽1時間に1回ナプキンを変えるほどの出血が続く▽吐くほどの痛みがある―といった症状がある方は、治療の対象になる可能性があります。
我慢のし過ぎに気付くきっかけとして、自分の月経記録を付けてみるのもよいでしょう。アプリなどで簡単に管理できる時代です。体の変化を見逃さず、早めに相談するためのヒントになります。
◇他人と比べる必要なく
生理痛やPMSのつらさは、外からは見えません。だからこそ気のせいだと自分を偽らず、無理をしないことが大切です。人と比べず、自分のつらさを認めてあげることが心身の健康への第一歩になります。
婦人科の受診に抵抗がある方がいるかもしれませんが、年齢に関係なく、「生理がつらい」というだけで相談してもOKです。話をするだけで安心できる方も多く、医師としても「もっと早く来てくれていたら…」と、たびたび思います。
◇体いたわる習慣を
将来、妊娠や出産を考えている方にとっても、生理のつらさと向き合うことは重要です。子宮内膜症などの病気は、不妊の原因となるケースもあるため、早期発見・早期治療が大切となります。
また、年齢を重ねるにつれ、ホルモンバランスの変化がさらなる不調を引き起こすことも。今のうちから体をいたわる習慣を持てば、長く健康を保つ土台ができます。
生理は病気ではないけれど、つらさは我慢しなくていい。もっと気軽に、もっと前向きに、自分の体と向き合える社会であってほしいと思います。婦人科は、そんなあなたを支える場所です。つらさを見過ごさず、自分を大切にする一歩として、ぜひ勇気をもって相談してください。(了)
